~1人で描いた世界最大の絵画~

170m絵画「四季の国・日本」

取材に10年、制作に10年。日本の自然・春夏秋冬を一度に旅する170mの超大作絵画

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100m絵画「ユーラシア大陸」から海を渡り日本へ
100m絵画「ユーラシア大陸」を描き上げて展覧会を開き、「(海を渡れば)もうすぐ日本ですね。楽しみにしています。」と言われた時、100メートル描いてきたつらさに苦笑いするより他なかった。しかし、2年ほど経つと描いていた時のつらさは忘れるもので、気づけば日本を描くことを考え始めていた。日本を描くと考えると、「四季」だと思った。同じ描くのなら最高の大自然を描こうと、10年間日本各地をスケッチ取材して廻った。取材と制作と続ける中で温暖化が進んで行くのを感じ、今のうちに描き残さなければならないと想いを強めた。 先に描いた100m絵画の高さが2.4メートルあったので、それに合わせるとどんどん長い絵になっていった。それでも当初は20メートル×4季節で80メートル程度の考えでいた。描き始めてから、季節と季節の間が同じくらいの長さがいることが分かった。これが季節の移り変わりで、日本独特の情緒というものである。気づけば全長170メートルになっていた。

新緑~梅雨

【2005年 愛知万博展示 パンフレットより】
15年程前に四季の移ろいがおかしいと感じ始め取材を始めるようになり、北は北海道から九州までくまなく取材するが、自然の悲鳴が


【2005年 愛知万博展示 パンフレットより】
15年程前に四季の移ろいがおかしいと感じ始め取材を始めるようになり、北は北海道から九州までくまなく取材するが、自然の悲鳴が聞こえてくる事が制作への想いを深めた。秋の紅葉が物語る色が冴えない。紅葉前に葉が落ちて人生の秋と一緒で豊かさがない。その時感じた温暖化が一段と進んでいるが、それでもまだ冬には雪が降り、春には新芽が芽吹き、夏は暑くなっているがクーラーが頼りでおぼつかない。描く内に色々な想いが浮かんでくる。描けば描く程、何と自然は複雑で雄大なものか言葉では表せない。到底、人の力によって作り得る事の出来ないものだが、あって当然となってしまったことを反省する。この美しさと精妙さに感謝せずにはおられないし、人間を超えた存在に対して畏敬の念を感じ得る。自然の恵みを無償で得て生きている事を、改めて問うてみたいと感じた。 絵画が大きくなってしまったのは、余りにも想いが強かったせいかもしれない。自然の崇高さや怖れまで描けたらと思う。一人で絵画を描くことの限界を知ることも出来るかもしれないが、自然には敵わない。100年も前に博物学の巨人・南方(みなかた)熊楠(くまぐす)翁は、エコロジーという言葉を使い「自然の破壊は人間の破滅に繋がる」と述べられていて、ロンドン時代に産業革命でいかに自然が破壊されたかを知り、自然を身を持って守り我々にメッセージを送った。昨今の世の中の乱れや社会不安はその現れかもしれない。自然への感謝が薄らいだ事が、子孫にまで影響を及ぼすことは避けたい。自然を征服する時代から、自然との共生の時代に入った。 日本人の根幹を成すものは、やはり日本の四季であり、繰り返される四季の緩やかな営みや美しさが私たちを育ててくれている。それがエネルギーやパワーとなり、勤勉さや優しさ・強さを生んでいる。絵画によってそれが現せたら、そして人々に夢や希望・勇気が与えられるとしたら嬉しい。このままではいけない、日本再生の一つにでもなれば、描いてきたことの意味がある。古来、日本人は自然と共に生きてきた歴史があり、世界の人々にも知って欲しい事である。微力ではあるが、自然との共生の第一歩である。